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補助金の「賃上げ要件3.5%」は高い?公的データで見る日本の賃上げの実態【2026年最新】

「補助金の賃上げ要件、年3.5%と聞いたけれど、うちでも対応できるのかな」

補助金のご相談の中で、このようなご質問をよくいただきます。現在、多くの補助金では「従業員1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増やす」ことが基本要件となっており、初めて聞くと高い数字に感じられる方も多いと思います。

そこで本記事では、厚生労働省・日本商工会議所・連合・経団連などが公表している公的なデータをもとに、日本の賃上げの「今」を整理しました。調べてみると、多くの中小企業がすでに3.5%前後、あるいはそれ以上の賃上げに取り組まれていることが見えてきます。

補助金の申請を検討されている経営者の方、賃上げ要件が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

この記事のポイント

  • 補助金の賃上げ要件「年平均3.5%」は、物価安定の目標(2%)を1.5%上回る水準として設定されています
  • 2026年の春闘では、中小組合でも4.69%。厚生労働省・日本商工会議所の調査でも、中小企業の賃上げ率は3.5%以上です
  • 最低賃金は4年連続で3.5%を超えるペースで上昇しており、時給の見直しだけでも人件費は上がっています
  • 要件は「1人当たり」で判定され、未達の場合は達成度に応じた返還となるため、申請前の試算が大切です

目次

  1. 補助金で求められる「賃上げ要件」とは
  2. お客様からよくいただくご質問
  3. データ①:春闘の賃上げ率は3年連続で5%前後
  4. データ②:労働組合のない企業を含む厚生労働省の調査
  5. データ③:小規模企業が多い日本商工会議所の調査
  6. データ④:経団連の中小企業集計
  7. データ⑤:最低賃金の引き上げ
  8. 公的データを並べてみると
  9. 年3.5%の賃上げを、金額にすると
  10. 「気づいたら達成していた」が起こる理由
  11. 要件を達成できなかった場合の返還
  12. 申請前に確認したい5つのポイント
  13. よくあるご質問
  14. まとめ
  15. 出典・参考資料

1. 補助金で求められる「賃上げ要件」とは

2026年9月30日から申請受付が始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」(第1回公募、申請締切は2026年10月30日18:00)では、事業計画期間(3〜5年)において、次の数値目標を達成する計画を立てることが基本要件となっています。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の基本要件。付加価値額 年平均4.0%以上、従業員1人当たり給与支給総額 年平均3.5%以上、事業場内最低賃金 地域別最低賃金+30円以上
出典:中小企業庁・中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」公募要領をもとに当社作成
要件内容判定
付加価値額営業利益+人件費+減価償却費を、年平均4.0%以上増加事業計画期間の年平均成長率
1人当たり給与支給総額年平均3.5%以上増加事業計画期間の年平均成長率
事業場内最低賃金地域別最低賃金より30円以上高い水準毎年

※このほか、一般事業主行動計画の策定・公表などの要件があります。中小企業省力化投資補助金(一般型)など、他の補助金でも同様の賃上げ要件が設けられているものがあります。最新の要件は必ず各補助金の公募要領でご確認ください。

「1人当たり給与支給総額」とは

公募要領では、「給与支給総額÷従業員数」と定義されています。給与支給総額には給料・賃金・賞与が含まれ、役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金は含まれません。

つまり、従業員を増やして会社全体の人件費が増えただけでは達成にならず、従業員1人ひとりの給与水準が伸びているかがポイントになります。

なぜ「3.5%」なのか

3.5%は日本銀行の物価安定の目標2%に1.5%を加えた水準。以前の要件は給与支給総額 年平均1.5%以上だった
出典:財務省「令和7年度予算執行調査の結果の反映状況」ほかをもとに当社作成

財務省の予算執行調査では、賃上げ要件について「3.5%(日本銀行が定める『物価安定の目標』+1.5%)という物価上昇率を上回る水準」に変更する方針が示されています。物価が上がる中でも、従業員の実質的な所得が増えることを目指した水準です。

以前のものづくり補助金(令和5年度補正予算)では「給与支給総額 年平均1.5%以上」が要件でした。数字だけを比べると大きく引き上げられたように見えますが、この間に世の中の賃上げの水準も大きく変わっています。次の章から、公的データで確認していきます。

2. お客様からよくいただくご質問

賃上げ要件について、経営者の方から特によくいただくのが、次のようなご質問です。

「賃上げ3.5%が条件と聞いたけれど、うちでも対応できるのかな」

「小さい会社でも、皆さんそれくらい上げているもの?」

「特にベースアップはしていないけれど、関係あるの?」

「もし達成できなかったら、どうなるの?」

本記事では、これらのご質問に公的データでお答えしていきます。

3. データ①:春闘の賃上げ率は3年連続で5%前後

まずは「世の中では、どれくらい賃上げしているの?」というご質問です。毎年の賃上げの代表的な指標である、連合(日本労働組合総連合会)の春闘の集計を見てみます。

連合の春闘賃上げ率の推移。2013年から2022年は2%前後、2023年に3.58%、2024年5.10%、2025年5.25%、2026年5.01%。中小組合は2026年に4.69%
出典:連合「春季生活闘争 最終回答集計」各年、厚生労働省「連合 春季賃上げ妥結状況」をもとに当社作成

2013年から2022年までの約10年間、賃上げ率は2%前後で推移していました。それが2023年に3.58%と大きく上昇し、2024年以降は3年連続で5%台となっています。

2026年の最終集計(5,368組合)では、全体で月額16,400円・5.01%、組合員300人未満の中小組合(3,831組合)でも月額12,866円・4.69%でした。中小組合の賃上げ率は、比較可能な2013年以降で最も高い水準です。

年全体中小組合(300人未満)
2022年2.07%1.96%
2023年3.58%3.23%
2024年5.10%4.45%
2025年5.25%4.65%
2026年5.01%4.69%

※平均賃金方式(加重平均)、定期昇給相当分を含む賃上げ率

4. データ②:労働組合のない企業を含む厚生労働省の調査

春闘の数字は労働組合のある企業が中心です。そこで、労働組合のない企業も含めて調査している、厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」を見てみます(常用労働者100人以上の民間企業が対象)。

厚生労働省 賃金引上げ等の実態に関する調査。2025年の1人平均賃金の改定率は全体4.4%、5,000人以上5.1%、1,000〜4,999人5.0%、300〜999人4.0%、100〜299人3.6%
出典:厚生労働省「令和7年 賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」をもとに当社作成

2025年の1人平均賃金の改定率は4.4%(改定額13,601円)で、比較可能な1999年以降で最も高い水準となりました。また、1人平均賃金を「引き上げた・引き上げる」企業の割合は91.5%と、9割を超えています。

企業規模別に見ても、すべての規模で3.5%を上回っています。労働組合の有無で見ると、「労働組合あり」が4.8%、「労働組合なし」でも4.0%でした。

企業規模2024年2025年
全体4.1%4.4%
5,000人以上4.8%5.1%
1,000〜4,999人4.1%5.0%
300〜999人3.8%4.0%
100〜299人3.7%3.6%
労働組合なし(参考)3.6%4.0%

※1人平均賃金=所定内賃金(時間外手当等を除く毎月の賃金)の1人当たり平均額。予定を含む。

一方で、企業規模が小さいほど改定率が低い傾向も見られます。100〜299人の企業では3.6%と、要件の3.5%に近い水準です。そのため、自社の数字を個別に確認することが大切です(5つのポイントで詳しくご紹介します)。

5. データ③:小規模企業が多い日本商工会議所の調査

「小さい会社でも、皆さんそれくらい上げているもの?」というご質問には、日本商工会議所・東京商工会議所の調査が参考になります。回答した2,260社のうち、55.7%が従業員20人以下の企業です。

日本商工会議所・東京商工会議所の調査。正社員の直近1年の賃金改定率4.29%、改定額12,036円、2026年度に賃上げを実施・予定の企業71.3%、従業員20人以下でも59.9%
出典:日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」集計結果(2026年6月8日)をもとに当社作成

2025年4月と2026年4月の正社員の月給を比較した「直近1年の賃金改定率」は4.29%(改定額12,036円)で、前年度調査から0.26ポイント上昇しました。

また、2026年度に賃上げを「実施済・実施予定」の企業は71.3%。従業員20人以下の企業でも59.9%と、小規模な会社でも約6割が賃上げに取り組まれています。

6. データ④:経団連の中小企業集計

経団連(日本経済団体連合会)が集計している、従業員500人未満の中小企業の春季労使交渉の結果(第1回集計、2026年7月8日公表)では、定期昇給を含む月例賃金の引き上げ額は平均12,083円、賃上げ率は4.20%でした。

前年の同調査(4.35%)からはやや低下したものの、引き上げ額は前年(11,826円)を上回っており、こちらも3.5%を上回る水準が続いています。

7. データ⑤:最低賃金の引き上げ

「特にベースアップはしていないけれど…」という会社でも、毎年確実に影響を受けているのが最低賃金です。

最低賃金の全国加重平均の推移。2022年度961円(+3.3%)、2023年度1,004円(+4.5%)、2024年度1,055円(+5.1%)、2025年度1,121円(+6.3%)、2026年度1,177円(+5.0%)
出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」各年度をもとに当社作成

最低賃金(全国加重平均)は、2023年度以降、毎年4.5〜6.3%のペースで上昇しています。2025年度の引き上げ額66円(+6.3%)は、目安制度が始まった1978年以降で最大でした。2026年度も全国平均で56円(約5.0%)引き上げられ、1,177円となります。

年度全国加重平均引き上げ額引き上げ率
2022年度961円+31円+3.3%
2023年度1,004円+43円+4.5%
2024年度1,055円+51円+5.1%
2025年度1,121円+66円+6.3%
2026年度1,177円+56円+5.0%

※2026年度は各都道府県の答申・決定額による全国加重平均(2026年9月時点)。発効日は都道府県によって異なります。

パート・アルバイトの方が多い会社では、最低賃金の改定に合わせて時給を見直すだけで、人件費が年3.5%以上のペースで増えているケースも少なくありません。

8. 公的データを並べてみると

ここまでご紹介した中小企業に関するデータを、1つのグラフにまとめました。

中小企業の賃上げ率の比較。最低賃金 約5.0%、連合 中小組合4.69%、日本商工会議所4.29%、経団連 中小企業4.20%、厚生労働省 100〜299人3.6%。いずれも補助金の要件3.5%を上回る
出典:各調査をもとに当社作成(詳細は記事末尾の出典一覧をご覧ください)
調査・集計対象賃上げ率
地域別最低賃金(2026年度)全国加重平均約5.0%
連合 2026春季生活闘争 最終集計組合員300人未満の組合4.69%
日本商工会議所・東京商工会議所(2026年6月)中小企業の正社員(直近1年)4.29%
経団連 中小企業 第1回集計(2026年7月)従業員500人未満の企業4.20%
厚生労働省 賃金引上げ等の実態に関する調査(2025年)従業員100〜299人の企業3.6%

調査ごとに対象や算出方法は異なりますが、どの公的データで見ても、中小企業の賃上げ率は補助金の要件である3.5%前後かそれ以上となっています。年3.5%の賃上げは、多くの会社が人材の確保・定着のためにすでに取り組まれている水準といえます。

9. 年3.5%の賃上げを、金額にすると

「3.5%」という割合だけでは、イメージしにくいかもしれません。月給25万円の従業員の方を例に、金額に置き換えてみます。

月給25万円の従業員の給与を毎年3.5%引き上げた場合の試算。1年後25.9万円(+8,750円)、3年後27.7万円、5年後29.7万円
当社による試算(賞与を除く、端数は四捨五入)
月給前年からの増加額
現在250,000円―
1年後258,750円+8,750円
2年後267,806円+9,056円
3年後277,180円+9,373円
4年後286,881円+9,701円
5年後296,922円+10,041円

1年目の増加額は月8,750円です。前述の日本商工会議所の調査では、中小企業の正社員の直近1年の賃金改定額は平均12,036円でした。「毎年このくらいは昇給している」と感じられる会社も多いのではないでしょうか。

※実際の要件判定は、月給だけでなく賞与等を含めた「従業員1人当たり給与支給総額」の年平均成長率で行われます。

10. 「気づいたら達成していた」が起こる理由

当社でお客様の給与データを一緒に確認すると、「特別な賃上げはしていないつもりだったが、毎年4%近く上がっていた」というケースもあります。これは、次のような賃上げが積み重なっているためです。

賃上げの内訳のモデルケース。定期昇給2.0%+最低賃金への対応1.0%+初任給・手当の見直し0.7%=合計3.7%
当社作成の架空のモデルケース(イメージ)
  • 定期昇給:毎年の昇給テーブルや評価に基づく昇給
  • 最低賃金への対応:最低賃金の改定に合わせたパート・アルバイトの時給見直し
  • 初任給・手当の見直し:採用競争に対応した初任給アップ、資格手当・住宅手当の新設など

一つひとつは小さな見直しでも、合計すると年3%台後半になることは珍しくありません。人材を確保するために日頃から取り組まれている賃上げが、そのまま補助金の要件につながる可能性があります。

※実際の伸び率は、従業員構成(正社員・パートの比率等)や賞与の増減、人の入れ替わりによって大きく変わります。

11. 要件を達成できなかった場合の返還

「もし達成できなかったら、どうなるの?」というご質問も多くいただきます。公募要領では、1人当たり給与支給総額の目標を達成できなかった場合、次の算式で補助金の一部を返還することとされています。

補助金返還額 = 補助金交付額 ×(1 − 実績の年平均成長率 ÷ 目標値)

交付額1,000万円・目標3.5%の場合の返還額の試算。実績0%以下で1,000万円、1.0%で714万円、2.0%で429万円、2.8%で200万円、3.0%で143万円、3.5%以上で返還なし
出典:「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」公募要領の返還規定をもとに当社作成

たとえば交付額1,000万円で、実績が年平均2.8%だった場合の返還額は200万円です。未達の場合も一律に全額返還となるわけではなく、達成度に応じた返還となります(年平均成長率が0%以下の場合は全額返還)。

また、付加価値額が増加しておらず、かつ事業計画期間の過半が営業赤字の場合や、天災など事業者の責めによらない理由がある場合は、返還が免除されます。なお、事業場内最低賃金の要件を満たせなかった年度は「補助金交付額÷事業計画期間の年数」の返還、補助上限額の引き上げを受ける「賃上げ特例」の未達には別の規定があります。

12. 申請前に確認したい5つのポイント

賃上げ要件で事前に確認したい5つのポイント
出典:「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」公募要領をもとに当社作成

① 判定は「総額」ではなく「1人当たり」

従業員を増やして給与総額が増えても、1人当たりの水準が伸びていなければ達成になりません。

② 役員報酬・法定福利費などは含まない

対象は従業員に支払う給料・賃金・賞与等です。役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金は含まれません。

③ 人の入れ替わりで数字が動く

1人当たり給与支給総額の算定方法は公募要領で定められており、期中の入社・退職やパートタイム従業員の比率の変化によって数字が変わります。ベテラン社員の退職や、新卒の大量採用がある年は特に注意が必要です。

④ 事業場内最低賃金は「毎年」確認が必要

最も時給の低い方の水準が、地域別最低賃金より30円以上高いことが毎年求められます。最低賃金は毎年改定されるため、改定のたびに確認が必要です。

⑤ 未達の場合は、達成度に応じた返還

返還リスクを把握するためにも、過去の実績をもとに「今のペースで達成できるか」を申請前に試算しておくと安心です。

13. よくあるご質問

Q. 賞与(ボーナス)は含まれますか?

A. 含まれます。1人当たり給与支給総額には、給料・賃金に加えて賞与も含まれます。月給の昇給だけでなく、賞与の増減も結果に影響します。

Q. 毎年必ず3.5%以上上げなければいけませんか?

A. 1人当たり給与支給総額の要件は、事業計画期間を通じた「年平均成長率」で判定されます。年によって伸び率に差があっても、期間全体の平均で目標を達成していれば要件を満たします。ただし、事業場内最低賃金の要件は毎年判定されます。

Q. 役員の報酬を上げれば達成できますか?

A. 役員報酬は給与支給総額に含まれないため、要件の達成には反映されません。

Q. パート・アルバイトの給与はどう扱われますか?

A. パートタイム従業員の扱いを含め、従業員数の算定方法は公募要領で定められています。会社ごとに従業員構成が異なるため、個別に確認することをおすすめします。

Q. 業績が悪化して赤字になった場合も返還が必要ですか?

A. 付加価値額が増加しておらず、かつ事業計画期間の過半が営業赤字の場合などは、返還が免除される規定があります。詳細な条件は公募要領でご確認ください。

14. まとめ

本記事では、補助金の賃上げ要件「年平均3.5%」について、公的データをもとに日本の賃上げの実態をご紹介しました。

  • 春闘の賃上げ率は3年連続で5%前後、中小組合でも4.69%(2026年)
  • 労働組合のない企業を含む厚生労働省の調査でも、全体4.4%・労働組合なし4.0%(2025年)
  • 小規模企業が多い日本商工会議所の調査でも、正社員の賃金改定率は4.29%(2026年)
  • 最低賃金は4年連続で3.5%を超えるペースで上昇(2026年度は1,177円)

年3.5%の賃上げは、多くの会社がすでに人材確保のために取り組まれている水準です。日頃の賃上げの取り組みを補助金の活用につなげることで、設備投資や新事業への挑戦を後押しできる可能性があります。

一方で、要件は「1人当たり」で判定され、人の入れ替わりなどで数字が変わります。申請を検討される際は、まず自社の実績を確認しておくことが大切です。

出典・参考資料

※本記事は2026年10月2日時点の公表情報をもとに作成しています。補助金の要件や各種データは今後変更・更新される場合があります。申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。

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