Column

財務のコラム

コラム

熱処理炉・真空炉の更新に使える補助金

熱処理炉の更新に使える補助金は「省力化投資補助金(一般型)」が中心

熱処理炉や真空炉、焼入れ装置の更新に使いやすい国の補助金は、中小企業省力化投資補助金(一般型)です。炉そのものに加えて、自動搬入出や処理記録の自動化を組み合わせ、人の作業時間を減らす構成にすると対象になります。

新しい材料や新しい処理に挑み、新しいお客さまに売るための炉であれば、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が合う場合もあります。

熱処理工程で人の作業が残りやすいところ

熱処理の現場では、炉への製品の出し入れ、治具への積み込み、温度や時間の記録、前後の洗浄など、人の手がかかる作業が多く残っています。重い製品や高温の環境での作業は、人が集まりにくい理由にもなります。

省力化投資補助金は、こうした作業を機械やシステムで減らす投資を支える制度です。炉の更新をきっかけに、どの作業をどれだけ減らせるかを計画書で示せれば、補助金を使えます。

反対に、古い炉を同じ型の新しい炉に替えるだけでは、人の作業はあまり変わりません。更新のときに何を自動にするかを決めることが、申請の出発点になります。

熱処理炉・真空装置に使える補助金は2つ

中小企業省力化投資補助金(一般型):人の作業を減らす投資に

今の仕事の工程で、人の作業を減らす投資に合う補助金です。熱処理の現場では次のような投資が考えやすい内容です。

  • 炉に自動搬入出の装置を組み合わせ、炉の前に付きっきりの作業と、重い製品の積み下ろしを減らす
  • 温度や処理の記録を自動で残し、記録づけと品質管理の手間を減らす
  • 前後の洗浄・検査工程とつなぎ、工程間の運び出しと待ち時間を減らす
従業員数 補助上限額 大幅賃上げ特例の場合
5人以下 750万円 1,000万円
6〜20人 1,500万円 2,000万円
21〜50人 3,000万円 4,000万円
51〜100人 5,000万円 6,500万円
101人以上 8,000万円 1億円
項目 内容
補助率 中小企業 1/2(最低賃金引上げ特例で2/3)/小規模企業者・小規模事業者・再生事業者 2/3
必須の経費 機械装置・システム構築費。単価50万円(税抜)以上の機械装置等を1つ以上
ほかに対象になる経費 運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費
基本要件 労働生産性 年平均+4.0%以上/1人当たり給与支給総額 年平均+3.5%以上/事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上/従業員21名以上は一般事業主行動計画の公表
事業計画期間 3〜5年
補助事業期間 交付決定から17か月以内(採択発表から19か月後まで)

公募要領では「単に汎用設備を単体で導入する事業については、本事業の対象とはなりません」とされています。一方で、導入環境に合わせて周辺機器や構成する機器・機能が変わる場合や、汎用設備を組み合わせてより高い省力化効果を出す場合は、オーダーメイド設備とみなされて対象になります。

出典:中小企業省力化投資補助金(一般型)事務局、第8回公募要領

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金:新しい製品・市場に挑む投資に

これまで受けられなかった材料・処理に挑み、新しい製品や新しいお客さまの市場に進出する投資に合う補助金です。今と同じ処理を増やすだけの投資は対象になりません。

  • これまで扱えなかった材料の熱処理を始め、新しい業界のお客さまから受注するための真空炉
  • 自社で新しい部品を開発し、その製造に必要な熱処理を社内で行うための装置
項目 革新的新製品・サービス枠 新事業進出枠
補助上限額 750万円〜2,500万円(従業員数による。特例で最大3,500万円) 2,500万円〜7,000万円(従業員数による。特例で最大9,000万円)
補助下限額 100万円 750万円
補助率 中小企業 1/2(特例で2/3)/小規模企業・小規模事業者 2/3 中小企業 1/2(特例で2/3)
向いている投資 新しい製品・サービスを開発するための設備やシステム これまでと違うお客さまの市場に進出するための設備やシステム

公式サイトには「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません」と書かれています。

出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト

熱処理炉で補助金の対象になる構成の例

熱処理炉は、炉だけを見ると汎用の設備に見えることがあります。次のように、自社の製品や工程に合わせて周辺の装置を組み合わせると、オーダーメイド設備として計画を立てられます。

例1:自動搬入出の装置まで含める

炉への製品の出し入れを人が行っている場合、処理が終わるたびに人が炉の前に立つ必要があります。夜間や休日に炉を動かしにくい理由にもなります。

搬入出の装置を一緒に入れると、炉の前に付きっきりの作業と、重い製品の積み下ろしを減らせます。決まった時間に人が付かなくてもよくなる分を、作業時間の削減として示せます。

例2:温度・処理の記録を自動で残す

温度や時間をチェックシートに書き写している場合、毎回の記録づけと、お客さまに出す書類づくりに時間がかかります。

炉の制御と記録の仕組みを組み合わせると、記録づけの手間と、品質を確かめる作業の時間を減らす構成になります。

例3:前後の洗浄・検査工程とつなぐ

熱処理の前の洗浄や、あとの検査が別の場所にあると、製品を運ぶ作業と、工程の間の待ち時間が生まれます。

洗浄機や搬送の装置とつないで一連の工程として組むと、運び出しと待ち時間をまとめて減らす計画になります。

計画書の中心になる「減る作業時間」の考え方

省力化投資補助金の計画書では、熱処理炉と周辺の装置を入れる前と後で、人の作業時間がどれだけ変わるかを数字で示します。工程ごとに、今かかっている人数と時間を書き出すところから始めます。

工程(例) 今 導入後 減る時間(1日あたり)
炉への出し入れ・積み下ろし 2人×3時間 0.5人×3時間 4.5時間
温度・処理の記録づけ 1人×2時間 1人×0.5時間 1.5時間
前後の工程への運び出し 1人×3時間 1人×1時間 2時間

表は考え方を示すための例です。実際には、自社の現場で測った人数と時間をもとに計算します。

熱処理の現場では、炉ごとの処理回数と、1回あたりに人が付いている時間が、今の作業時間を示す材料になります。

減った時間を、より付加価値の高い仕事に回し、労働生産性を年平均4.0%以上、1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上伸ばす計画につなげることが基本要件です。

熱処理炉の補助額の計算例

省力化投資補助金(一般型)では、補助の対象になる経費(税抜)に補助率をかけた額が、従業員数ごとの補助上限額までもらえます。以下は計算の例です。

例 従業員数 補助の対象になる経費(税抜) 補助上限額 補助率 補助額
例A 35名 4,000万円 3,000万円 1/2 2,000万円
例B 35名 7,000万円 3,000万円 1/2 3,000万円(上限で止まる)
例C 60名 7,000万円 5,000万円 1/2 3,500万円

中小企業の補助率1/2で計算した例です。小規模企業者・小規模事業者・再生事業者に当たる場合は、補助率が2/3になります。

熱処理炉は投資額が大きくなりやすいため、例Bのように上限額で止まることがあります。大幅賃上げ特例を使えば、従業員21〜50人の上限は4,000万円、51〜100人の上限は6,500万円に上がります。

表はあくまで計算の例です。実際の補助額は、審査や交付申請で認められた経費で決まり、採択を約束するものではありません。

申請の流れと第9回のスケジュール

  1. 構成と見積をそろえる:炉と搬入出・記録・前後工程の装置まで含めた構成を決め、メーカーから見積書をそろえます。
  2. 事業計画書をつくり、電子申請する:人の作業時間がどれだけ減るか、賃上げをどう進めるかを数字で書きます。
  3. 採択の発表:審査を経て、補助金を受け取れる候補として選ばれます。
  4. 交付申請・交付決定:見積書などを出し、補助の対象になる経費が確定します。
  5. 発注・導入・支払い:交付決定のあとに発注します。交付決定から17か月以内に導入と支払いを終えます。
  6. 実績報告・現地調査・入金:導入した設備と証拠書類を確認してもらい、補助金額が確定したあとに入金されます。
補助金 公募の状況(2026年10月23日時点)
省力化投資補助金(一般型) 第8回は2026年10月16日に締め切り済み。第9回は2026年11月上旬に公募開始、12月下旬に締め切りの予定と公表されています
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回の申請受付は2026年10月30日(金)18時締め切り

熱処理炉は、メーカーとの仕様の打ち合わせや見積に時間がかかります。第9回の締め切りは12月下旬の予定なので、年内に申請したい場合は早めに構成を決めておくと安心です。

補助事業期間は交付決定から17か月以内です。炉の製作や据付けに時間がかかる場合は、この期間に導入と支払いが終わるかも確かめておきます。

省力化投資補助金(一般型)の採択率(申請した事業者のうち採択された割合)は、第1回68.5%、第2回60.9%、第3回66.8%、第4回69.3%、第5回61.5%、第6回63.9%です。申請すれば通る補助金ではないため、計画書の中身で差がつきます。

熱処理炉の申請で気をつけたいこと

発注は交付決定のあと

公募要領では、対象経費は「交付決定を受けた日付以降に契約(発注)等を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものに限ります」とされています。先に発注した炉は補助の対象になりません。

基礎工事や設置場所の整備は対象外

炉の更新では、基礎やピット、配管・電気の工事が一緒に出ることがよくあります。公募要領では、設置場所の整備工事や基礎工事に要する費用は対象外です。

見積書では、炉と周辺装置の費用と、建屋や基礎の工事の費用を分けておきます。中古品の購入費も対象外です。

導入後に現地調査がある

補助金の額を確定する前に、事務局が現地調査を行います。設備や証拠書類が確認できない場合、その金額は補助の対象になりません。

よくある質問

熱処理炉の更新でも使えますか?

使えます。自動搬入出や処理記録の自動化と組み合わせて、人の作業時間を減らす構成にすると対象になります。

真空炉や焼入れ装置も対象になりますか?

人の作業を減らす構成になっていれば対象になります。どの作業がどれだけ減るかを計画書で示すことが大切です。

炉の基礎工事や配管工事も補助の対象になりますか?

省力化投資補助金では、設置場所の整備工事や基礎工事に要する費用は対象外です。見積書で設備の費用と工事の費用を分けておきます。

リースで炉を入れる場合も補助金を使えますか?

省力化投資補助金では、公益社団法人リース事業協会の確認を受けたリース会社が、中小企業等と共同で申請する形があります。応募のときに申告が必要なので、先にリース会社と相談しておきます。

まずは使えるかどうかの確認から

熱処理炉の補助金は、炉の更新に合わせて何を自動にするかで、対象になるかどうかが決まります。

Taigen株式会社は、採択160件以上・支援した補助金の総額30億円以上の実績をもとに、構成の組み立てから事業計画書づくり、採択後の交付申請・実績報告まで伴走しています。

設備の内容と金額を伺えば、どの補助金が合うか、補助額はいくらになりそうかを無料でお伝えします。詳しくは設備別のご案内ページをご覧ください。

無料で相談する

他のおすすめ記事