
コラム
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「賃上げしたいけど、どんな補助金や助成金が利用できる?」
「申請はどうしたらいいの?」
中小企業や個人事業主にとって、助成金や補助金は事業を成長させるための重要な資金源です。申請プロセスは複雑であり、多くの方が活用しきれていないのが現状です。
適用できる補助金があっても、申請条件や必要書類の理解不足により機会を逃してしまう場合もあります。
本記事では、最新の助成金・補助金情報をわかりやすく整理し、スムーズな申請をサポートします。ぜひ最後までご覧ください。
本記事でわかること
賃上げを実施する際に活用できる補助金・助成金の主な制度を紹介します。
制度名 | 概要 |
業務改善助成金 | 最低賃金引き上げと生産性向上を目的とした 設備投資をした中小企業や小規模事業者に対して、 設備投資費用の一部を助成する制度 |
キャリアアップ助成金 | 非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善のための 取り組みを実施する事業主に対して助成される制度 |
中小企業向け賃上げ促進税制 | 従業員の賃上げや人材育成への投資に積極的な企業が、 給与増加額の最大40%を法人税・所得税から税額控除できる制度 |
中堅・中小成長投資補助金 | 中堅・中小企業の成長と持続的な賃上げを支援するため、 一定以上の投資と賃上げを行う企業に対して補助する制度 |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者が経営計画を作成し、 経営計画に基づいて行う販路開拓等の取り組みの経費の一部を補助する制度 |
補助金や助成金を活用すると、賃上げの負担を軽くし、経営の安定を図ることができます。
業務改善助成金は、最低賃金の引き上げと生産性向上を目的とした設備投資を行う中小企業や小規模事業者に対して、設備投資費用の一部を助成する制度です。
企業の競争力向上を目的とし、賃上げと業務効率化を同時に実現する必要があります。
対象
業務改善助成金を申請するには、いくつかのステップを順番に進める必要があります。具体的な流れを詳しく説明していきます。
まずは「交付申請書」や「事業実施計画書」を作成します。
事業実施計画書には、賃金の引き上げ額、就業規則の変更内容、生産性向上や業務効率化の具体的な取り組みなどを詳しく記載する必要があります。
どの従業員の給与をいくら引き上げるのか、給与規定をどのように改定するのか、生産性を向上させるために導入する設備や業務改善の方法などを明確に示すことが求められます。
これらの書類を準備できたら、事業所を管轄する労働局へ提出します。提出方法は窓口提出や郵送などがあり、自治体ごとに異なる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
申請書類が提出されると、労働局において審査が行われます。
この審査には通常約1か月程度の期間がかかり、提出書類の内容が助成金の要件を満たしているかどうかが確認されます。
審査が終わると、申請者に対して「交付決定通知」が送られます。助成対象として認められたことが正式に決まります。
申請内容に不備がある場合は審査期間が延びたり、場合によっては交付が認められないこともあるため、記入内容を慎重にチェックすることが重要です。
交付決定の通知を受け取ったら、実際に計画した生産性向上のための取り組みを開始します。
ここで注意すべき点は、交付決定前に事業を開始してしまうと助成対象外になってしまうことです。
新しい機械設備を導入する計画を立てていた場合、交付決定を受ける前に機械を購入してしまうと、その費用は助成の対象にならなくなります。
そのため、必ず交付決定通知を受領した後に事業を開始するようにしましょう。
業務改善助成金を受け取るためには、事業計画に沿って従業員の賃金を引き上げる必要があります。
賃上げの実施は申請後(郵送で申請した場合は労働局に届いた後)から行うことができます。
交付決定を待つ必要はなく、早めに給与改定を実施することも可能です。
助成対象となるためには、計画した通りの賃上げを行うことが必須であり、最低でも6か月間は引き上げた賃金を維持する必要があります。
計画と異なる形で賃金改定を行った場合、助成金が支給されない可能性もあるため、慎重に進める必要があります。
生産性向上のための取り組みが終わり、賃金引上げが実施された後は、その実施状況を報告する「事業実績報告書」を作成し、労働局へ提出します。
この報告書には、実際に行った業務改善の内容や、かかった経費の詳細を記載する必要があります。たとえば、新しく導入した設備の領収書や、改定後の給与明細などの証拠書類も併せて提出することが求められます。
労働局が提出された事業実績報告書を審査し、計画通りの業務改善が行われ、適切に賃金引き上げが実施されたことが確認されると、助成金の支給が決定されます。
審査に問題がなければ、指定の銀行口座に助成金が振り込まれます。支給までの期間は申請状況や審査の混雑状況によって異なりますが、通常、報告書提出後2〜3か月程度で支給されることが多いです。
最低賃金が地域の最低賃金に近い中小企業で、生産性向上を目指す企業におすすめです。
機械設備の導入やコンサルティング、人材育成など、さまざまな投資が対象です。計画的な賃上げが必須条件となるため、長期的な成長を見据えた取り組みが求められます
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善のための取り組みを実施する事業主に対して助成される制度です。労働者の安定した雇用を促進し、企業の人材定着率向上を目指しています。
支援内容
具体的な活用例
キャリアアップ助成金を申請するには、いくつかの重要な手順を順番に進める必要があります。申請の流れを一つずつ詳しく説明します。
キャリアアップ助成金の申請を進めるにあたり、最初に「キャリアアップ計画書」を作成する必要があります。この計画書には、どのコースを実施するのか、対象となる労働者は誰か、達成したい目標などを具体的に記載します。
作成した計画書は、実施するコースの日の前日までに提出することが必要です。この期限を過ぎると助成金の対象にならないため、計画的に準備を進めましょう。
作成した計画書については、労働組合または労働者の代表者に意見を求める必要があります。これは、労働者の立場を考慮した適切な計画であるかを確認するためのステップです。
その後、計画書を管轄のハローワークまたは労働局に提出し、正式に受理されることで申請の第一歩が完了します。
正社員化支援コースを利用する場合、企業は就業規則を改定し、正社員転換の基準や直接雇用制度を明確にする必要があります。
この改定には、有期契約社員から正社員への転換・基準転換後の処遇や賃金の改善内容・直接雇用の方針や手順を盛り込む必要があります。
作成した就業規則は、労働者に対して適切に周知し、変更内容を十分に理解してもらうことが重要です。労働基準監督署に届け出ることも必要です。届け出が完了して初めて、助成金の要件を満たす準備が整います。
キャリアアップ助成金の支給対象となるには、計画書に基づいた取り組みを実際に行います。
正社員化支援コースの場合
企業は、改定した就業規則の内容に沿って、有期契約労働者を正社員へ転換します。契約社員として一定期間勤務した従業員が、就業規則の基準を満たした場合に、正社員へ昇格させる手続きを進めます。
処遇改善支援コースの場合
賃金の引き上げや労働時間の適正化、福利厚生の充実など、計画に沿った処遇改善の取り組みを行います。時給を一定額以上引き上げる、賞与を新たに支給する、退職金制度を導入するといった取り組みが含まれます。
正社員化支援コースを適用した場合、正社員に転換した後、6か月間継続して賃金を支払うことが条件となります。
この期間の賃金支払いが確認できなければ助成金の支給は受けられません。支払いの証拠として、給与明細や賃金台帳などの書類をしっかりと保管しておくことが重要です。
処遇改善支援コースを利用した場合も、賃金の引き上げや手当の支給が適切に行われたことを証明できる書類が必要です。
助成金を受け取るためには、取り組みを実施した後に支給申請書類を作成し、管轄の労働局へ提出する必要があります。
申請は、取組完了後の賃金支払日の翌日から2か月以内に行う必要があります。期限を過ぎると申請が認められないため、早めに準備を進めることが重要です。
提出する主な書類には、「支給申請書」「対象労働者の詳細(転換前後の雇用形態など)」「賃金台帳(6か月分の給与支払いが記録されているもの)」「出勤簿(勤務状況を証明するもの)」が含まれます。
書類が揃ったら、管轄の労働局に提出し、正式に支給申請を行います。
申請書類が提出されると、労働局にて審査が行われます。
審査では、計画通りの取り組みが実施されたか、賃金の支払いが適切に行われたか、提出書類に不備がないかなどが細かくチェックされます。
審査の結果、助成金の要件を満たしていると認められれば、正式に支給決定となり、指定の銀行口座に助成金が振り込まれます。
書類の不備や申請内容と実際の取り組みに違いがある場合は、支給が遅れたり、最悪の場合は申請が却下されたりする可能性があるため、注意が必要です。
非正規雇用の従業員が多い企業で、正社員化や待遇改善を進めたい事業主におすすめです。
キャリアアップ計画の策定が必須となり、計画的な取り組みが必要です。各コースごとの詳細な要件を確認し、自社にピッタリ合った形で活用できます。
賃上げや人材育成への投資に積極的な企業が、給与増加額の最大40%を法人税・所得税から税額控除できる制度です。税制上の優遇措置を活用し、従業員の待遇向上を図ることができます。
適用期間
2024年4月1日から2027年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主は2025年から2027年までの各年)
対象
青色申告書を提出する必要がある場合、大規模法人からの出資比率によっては対象外となる場合があります。中小企業向け賃上げ促進税制は特に賃上げや教育訓練費の増加を考えている中小企業におすすめです。
中堅・中小企業が新たな設備投資や人材投資を行う際に活用できる補助金で、企業の成長を後押しするための支援制度です。
支援内容
中堅・中小成長投資補助金は、大規模な設備投資や事業拡大を計画している中堅・中小企業、持続的な賃上げを目標としている企業におすすめです。
活用するには、投資後3年間で給与総額の年平均上昇率が都道府県の基準以上であることが要求されます。もしこの基準を達成できない場合、補助金の返還リスクが生じるため、注意が必要です。
小規模事業者が経営計画を作成し、それに基づいて行う販路開拓等の取り組みの経費の一部を補助する制度。
対象
申請にはいくつかのステップがあり、それぞれの段階を適切に進めることが求められます。ここでは、申請から補助金の受領までの流れを詳しく説明します。
補助金の申請にあたっては、まず経営計画を策定することが必要です。企業の現状や強み、顧客ニーズ、市場動向などを整理し、具体的な事業計画を明確にすることが求められます。
計画書には、企業概要(事業の基本情報)・市場動向と顧客ニーズ(ターゲット層や競合状況など)・自社の強み(他社との差別化ポイント)・経営方針と目標(今後の成長戦略)を含める必要があります。
補助事業の名称を決める際には、30文字以内で分かりやすいものを設定するようにしましょう。事業内容が一目で伝わる名称を選ぶことで、審査時の評価がスムーズになります。
申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。このアカウントを取得するのに1〜2週間ほどかかるため、早めに手続きを進めておくことが重要です。
経営計画を策定した後は、管轄の商工会議所または商工会に「事業支援計画書(様式4)」の発行を依頼する必要があります。
「事業支援計画書(様式4)」は、事業計画の妥当性や実現可能性について、商工会等が支援することを証明する書類です。この書類の取得には1〜2週間程度かかるため、余裕を持って依頼することが大切です。
締切が近づくと依頼が集中し、発行が遅れることもあるため、早めの準備を心がけましょう。
商工会等の支援を受けた後は、補助金事務局に申請書類を提出します。申請方法としては、**電子申請(Jグランツ)**が推奨されており、郵送での申請は減点対象となるため注意が必要です。
申請時に提出する主な書類は、申請書・経営計画書・補助事業計画書・業態に応じた追加書類です。
申請書類を準備する際には、誤記や記載漏れがないように細かく確認し、計画の実現可能性を明確に示すことが重要です
申請書類が提出されると、補助金事務局によって審査が行われます。この審査は、外部の有識者によって評価されるため、単に書類を揃えるだけでなく、内容の質も重要になります。
審査では、事業計画の具体性(実現可能な計画かどうか)・市場ニーズに合致しているか・自社の強みを活かした内容か・補助金を活用することでどのような効果が見込めるかというポイントが評価されます。
加点対象となる要素(地域経済への貢献、環境配慮、デジタル活用など)を意識した計画を作成すると、採択される可能性が高くなります。
審査の結果、評価が高い事業計画から順に採択され、後日発表されます。
審査を通過し、採択された場合は、補助金事務局から交付決定通知書が届きます。この通知を受け取った後、計画に基づいて事業を遂行することになります。
この段階で重要なのは、事業期間中の経理処理や証拠書類の保管です。補助金を受け取るためには、支出の詳細を証明できる領収書や契約書、振込明細書などを適切に管理しておく必要があります。
補助事業の実施中に計画の変更が必要になった場合は、補助金事務局に事前相談を行い、承認を得るのが必要です。
事業が完了したら、実績報告書を作成して提出します。この報告書では、実際に実施した内容やかかった経費、事業の成果などを詳しく記載しなければなりません。
実績報告書を提出し、審査を通過すると、補助金の確定通知書が発行されます。その後、精算払請求の手続きを行い、補助金が指定の口座に振り込まれます。
補助金が着金したら終わりではなく、その後も「補助事業の効果」を報告する義務があります。
補助金を受け取った事業者は、補助事業終了後に事業効果等状況報告を提出する必要があり、事業の進捗や成果を記録することが求められます。
小規模事業者持続化補助金は、申請から補助金の着金までに約1年かかるとされています。そのため、補助金を活用した事業計画は、短期的な資金調達ではなく、長期的な視点で進めることが大切です。
商工会からのサポートが受けられるため、初めて補助金申請を行う事業者でも安心して取り組むことができる制度です。
この制度には複数の枠があり、それぞれに異なる要件があります。販路開拓や新商品開発など、具体的な経営改善計画を持つ小規模事業者におすすめです。
給与の引き上げは、企業にも従業員にも多くのメリットがあります。
大企業と比べて資金に余裕がない中小企業では、賃上げの実施が難しい場合もあります。
中小企業の課題を踏まえ、政府はさまざまな支援策を拡充しています。
補助金や助成金を活用する際には、いくつかのポイントを押さえておくようにしましょう。
本記事では、中小企業や個人事業主が賃上げに活用できる補助金・助成金の最新情報を紹介しました。
多くの企業が十分に活用できていない現状を踏まえ、各制度の概要や申請の流れ、注意点を分かりやすく説明しています。
賃上げは企業の成長と従業員の満足度向上に必要です。補助金や助成金を上手に活用し、最新情報をチェックしながら、無理なく実施する方法を検討しましょう。
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