コラム

業務改善助成金とは?制度と申請方法を解説

はじめに

生産性の向上を考えている事業者のみなさまの中には、業務改善助成金に興味のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では業務改善助成金について、特徴や手続きの流れを紹介します。賃金の増加と設備投資の両面から生産性の向上を検討している事業者のみなさまは、ぜひ参考にしてみてください。

業務改善助成金の概要

業務改善助成金

業務改善助成金の目的と背景

業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援するために厚生労働省が設けた助成金制度です。

この制度は、企業が事業場内の最低賃金の引き上げと設備投資やコンサルティング、人材育成などを行う場合に、その経費の一部を助成するものです。

事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内である中小企業・小規模事業者が対象となります。解雇や賃金引き下げなどの不交付事由がないことも条件として挙げられていますので、ご注意ください。事業場内最低賃金の引き上げ額や引上げ人数により助成上限額が異なります。

生産性向上と賃金引き上げの関係

生産性の向上と賃金の引き上げは密接に関連しているとされてます。生産性を向上することで事業者の資金繰りが改善される可能性があるため、賃金の引上げを行いやすくなるという関係性はイメージがしやすいのではないでしょうか。

一方で賃金の引き上げにより従業員のモチベーションが向上する可能性があるため、生産性のさらなる向上につながる可能性も少なくありません。

業務改善助成金は、労働者の賃金を引き上げるために不可欠な生産性向上を実現するための制度です。新しい機械設備の導入や効率的な業務フローの確立は、生産効率を高め、企業の収益性を向上させることが期待されます。その結果、従業員の賃金を引き上げる余力につながるといえるでしょう。

支給対象となる経費と上限額

設備投資の具体例

設備投資とは、事業の効率性や生産性を向上させるために必要な機械設備やソフトウェアを導入することを指します。業務改善助成金を利用して行われる設備投資の一例として、飲食業での食材スライサーや製氷機の導入、または店舗でのPOSレジシステムの設置などがあります。

これらの設備を導入することにより、作業効率を大幅に向上させることが可能です。

コンサルティングや人材育成

業務改善助成金は、設備投資だけでなく、コンサルティングや人材育成にも利用できます。

経験豊富なコンサルタントから業務フローの見直しや改善案の提供を受けることは、事業の競争力を高めることにつながります。また従業員のスキルアップを図るための研修や教育訓練も助成金の対象です。

これにより、労働者の生産性向上や働きがいの向上を期待できます。

支給される金額と助成率

業務改善助成金は事業場内最低賃金一定水準以上引き上げることなど、一定の条件を満たした場合に支給されます。

助成金の上限額は最大で600万円ですが、実際に支給される金額は具体的な設備投資やコンサルティング、人材育成などにかかる費用と助成率によって決まります。

具体的な支給額については、リーフレットや厚生労働省のホームページを参考に申請を行いましょう。

申請方法と手続きの流れ

申請の前に準備するもの

業務改善助成金を申請する前に、事業者は以下の書類や情報を準備することが必要です。

準備する書類としては、まずは交付申請書と事業実施計画書が挙げられます。付随して設備投資や人材育成など、助成を受ける対象となる具体的な計画を明確にし、それに関連する見積書や契約書の用意が必要です。

また事業場内最低賃金の引き上げ計画も必要になります。この計画は、労働者に通知するための書面や社内の給与規定などを含め、詳細に準備してください。

厚生労働省の公式サイトから最新の申請書類をダウンロードし、必要事項をすべて記入することも忘れないようにしましょう。

申請手続きのステップ

業務改善助成金の申請手続きは以下のステップで進みます。

ステップ1:書類の記入と計画の提出

厚生労働省の窓口やオンライン申請システムから正式な申請書類をダウンロードし、記入します。計画に必要な設備投資やコンサルティング、人材育成にかかる見積書の準備も忘れないようにしましょう。

書類の準備ができたら提出しましょう。申請書類に、契約書・見積書・賃金台帳といった添付書類を添えて提出します。

実際に賃金の引上げや設備投資を行うのは、計画の承認が下りてからです。
スケジュールについてはしっかりと確認してください。

ステップ2:計画に基づき設備投資等と事業場内最低賃金引上げの実施

申請書類が受理されると、担当者が審査を行われます。審査期間には1~2か月程度を要することがあるため、余裕をもった申請を行うことが重要です。

審査が通過したら、計画に基づいて設備投資等と事業場内最低賃金引上げを実施します。

ステップ3:事業実績報告書や支給申請書の作成と提出

事業が完了したら実績報告書や支給申請書といった書類の作成と提出を行います。

提出期限が定められているため、必ず期限内に提出するようにしましょう。なお提出期限は事業完了日から起算して1月を経過する日と、翌年度4月10日のいずれか早い日までです。

助成金の交付が決定すると、指定の口座に入金されます。

受給のための注意点

業務改善助成金を受給するためには、いくつかの注意点があります。

まず助成金を受給するための条件として、事業場内最低賃金の引き上げることが求められます。この条件を満たすためには、給与規定を見直し、労働者に対する通知を確実に行うことが重要です。

提出書類に不備があると審査が遅れる可能性があるため、書類のチェックを怠らないようにしましょう。2024(令和6)年度の助成金の申請期限は2024年12月27日、事業完了期限が2025年1月31日であることを覚えておくことよいでしょう。

成功事例の紹介

製造業における設備投資

業務改善助成金を利用した製造業の成功事例として、中小企業が取り組んだ設備投資が挙げられます。

この企業は製造ラインの効率を向上させるために最新の機械設備を導入しました。具体的には、自動化された切削機械と品質検査システムを導入し、生産性を大幅に向上させました。

これにより、従業員一人あたりの生産量が向上し、従業員の事業場内最低賃金を50円以上引き上げることができました。

機械設備の一部が助成され、初期費用の負担が軽減されました。結果として企業は短期間で投資効果を実感することができ、従業員の賃金引き上げにもつなげることができました。

小売業におけるコンサルティング活用

小売業における成功事例を紹介します。業務改善助成金を活用し、運営の効率化と従業員のスキルアップを図りました。この企業は外部のコンサルタントを招いて業務プロセスの見直しを行い、効率的なオペレーション体制を構築しました。

コンサルティングを通じて無駄な作業を排除し、業務の標準化を実現した結果、顧客対応のスピードと質が向上しました。これによって、企業の売上が伸び、従業員の賃金引き上げにも成功しました。

この事例でも、助成金の活用によりコストを抑えつつ、効果的な改善が実現できたことが事業者にとって生産性の向上へとつながりました。

2024(令和6)年の変更点と最新情報

2024(令和6)年度の変更点

以前から業務改善助成金について検討していた事業者のみなさまに向け、2024(令和6)年度の業務改善助成金の変更点を紹介します。

特例事業者に関する要件が改定されています。生産量要件がなくなったことほか、一部特例事業者に認められてい関連する経費についての認定が終了となりました。

また申請可能回数も年度内に1回までに制限されています。さらに複数回にわたる事業場内最低賃金の引き上げも対象外となりました。

これらの変更点をしっかりと頭に入れておくようにしてください。

最新の申請期限とスケジュール

令和6年度の業務改善助成金の申請期限は、2024年12月27日までとなっています。

また事業完了期限は2025年1月31日までです。

申請を検討している事業者の方は、このスケジュールをしっかりと把握し、必要な書類を準備していただくことが大切です。締切間際になると申請が集中する傾向があることからも、早めの準備を心がけることをおすすめします。

申請手続きについて不明点がある場合は、厚生労働省の公式ホームページやサポートデスクに問い合わせるとよいでしょう。

まとめ

本記事では業務改善助成金について紹介しました。

従業員の賃金の引上げは、中長期的な事業者の成長につながる手段といえるでしょう。またその財源を確保するため生産性の向上は、多くの中小企業が抱える課題です。

助成金を活用することで生産性を向上し、かつ賃金に反映していくことができる可能性があるため、ぜひ参考にしてみてください。

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