コラム

2025年版!キャリアアップ助成金は誰がもらえる?正社員コースの条件や申請方法

目次

キャリアアップ助成金とは?

ここ数年、契約社員やパート、派遣社員といった、いわゆる「非正規雇用労働者」の増加が注目されています。

こうした流れのなか、雇用が不安定になってしまう、賃金が低いままになりやすい、といった課題が頻繁に取り上げられるようになりました。

そこで政府が打ち出したのが、「キャリアアップ助成金」です。簡単にいえば「正社員化や処遇改善に取り組んだ企業に対して、一定の助成金を支給する」制度です。

「キャリアアップ助成金」について、厚生労働省のホームページでも詳細が公開されていますが、どうも専門用語が多かったりして、初めて見る人には少しハードルが高く感じるかもしれません。

そこで今回は、初めてキャリアアップ助成金に触れる方にもわかりやすいように、なるべく身近なエピソードも交えながら解説しようと思います。

具体的には、

  • 「キャリアアップ助成金って、そもそもいくら支給されるのか?」
  • 「キャリアアップ助成金は誰がもらえるのか? 企業の側なの? 労働者の側なの?」
  • 「コースが色々あるけれど、私の会社にはどれが合うの?」
  • 「正社員化コースってよく聞くけれど、どうやって使えばいい?」
  • 「キャリアアップ助成金を申請するときの注意点や落とし穴は?」

といった疑問に答えていきます。

キャリアアップ助成金の正社員化コースは一見すると複雑に見えますが、ちゃんと段取りを押さえておけば意外とスムーズに申請ができます。少しでもみなさんのお役に立てば嬉しいです。

キャリアアップ助成金は誰がもらえる?

さて最初の疑問、「キャリアアップ助成金は誰がもらえるのか?」。結論としては「企業(事業主)」が受給主体になります。

正式には「有期雇用労働者等のキャリアアップを図るための取り組みを行った事業主」を対象とする助成金です。つまり、非正規雇用労働者ご本人が直接もらえるわけではないんですね。

企業がこの助成金をもらうことで、たとえば非正規スタッフさんを正社員に登用するときの人件費負担が緩和されます。

あるいは、正社員と同じ賃金規定を適用したり、賞与や退職金を整備したりといった処遇改善策を導入するときのコストを補助してもらえます。

これによって、今まで「ちょっと人件費が重たいから……」と尻込みしていた処遇改善に踏み切りやすくなるわけです。

キャリアアップ助成金を貰うための要件・条件・金額

もうちょっと詳しくいえば、キャリアアップ助成金を受給するためには、

  • 会社が雇用保険適用事業所であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を置くこと
  • 国に対して「キャリアアップ計画書」を事前に提出して認定を受けること

といった要件・条件をクリアしなければなりません。

キャリアアップ助成金の対象となる事業主の正確な情報は、以下のとおりです。

キャリアアップ助成金の対象となる事業主(全コース共通)
  1. 雇用保険適用事業所の事業主
  2. 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主
    ※キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任はできません。
  3. 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、
    管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
  4. 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を
    明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主
  5. キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主
    (支給申請時点で各コースに定めるすべての支給要件を満たしている事業主)

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

また当然ながら、残業代の未払いがあるとか、労働法違反をしたばかりとか、そうした企業は対象外。そういう意味では、企業としてきちんと労務管理を行っていることが前提です。

具体的には、以下のいずかれに該当する事業主はキャリアアップ助成金を受給できません。

キャリアアップ助成金が受給できない事業主
  1. 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない
    事業主(支給申請後、滞納していることの通知はしませんので、ご確認の上で申請してください。)
  2. 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
  3. 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う
    事業主
  4. 暴力団と関わりのある事業主
  5. 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主
  6. 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主
  7. 支給申請時または支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない事業主

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

キャリアアップ助成金は「非正規スタッフが何人かいて、そのうち何人かを正社員にする予定がある」という会社さんにとっては非常に魅力的です。

ただ、誰でもなんでも簡単にもらえるわけではなく、ちゃんと国が定めた手順や必要書類を揃える必要があります。その点は次の項目で、コース別に解説していきます。

キャリアアップ助成金のコースごと条件や支給額一覧

キャリアアップ助成金は、大きく「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2つに分かれ、それぞれさらに細かいコースがあります。ここでは、厚生労働省の公開している情報を参考に、ざっと一覧を示してみましょう。

なお、本記事執筆時点では、令和6年度版のパンフレットをベースに話をしますので、申請を考えている方は必ず最新の情報を確認してみてくださいね。

キャリアアップ助成金には次のコースがあります。

正社員化支援
  • 正社員化コース
    有期雇用労働者等を正社員化
  • 障害者正社員化コース
    障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換

 

処遇改善支援
  • 賃金規定等改定コース
    有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額
  • 賃金規定等共通化コース
    有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用
  • 賞与・退職金制度導入コース
    有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を導入し支給または積立てを実施
  • 社会保険適用時処遇改善コース(令和8年3月31日までの暫定措置)
    有期雇用労働者等を新たに社会保険に適用させるとともに、収入を増加させる(手当支給・賃上げ・労働時間延長)。または、週所定労働時間を延長し、社会保険に適用させる。

それぞれのコースごとに、どういう企業向けなのか以下でまとめていきますね。

正社員化コースの条件や支給額

正社員化コース

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

まず「正社員化コース」は、企業内で「有期雇用労働者を正社員化する」「無期雇用労働者を正社員化する」「派遣社員を直接雇用する」といった取り組みをした場合にキャリアアップ助成金が支給されます。

具体的には、転換後6ヶ月の賃金が転換前6ヶ月と比べて3%以上増えていることなどが要件です。

そして大きなポイントとして、令和6年度にこの正社員化コースが拡充され、助成金額がぐっと増えました。

これまで1期(6ヶ月)だけだった支給が、2期(12ヶ月)まで受けられるようになり、

  • 中小企業だと有期雇用→正社員で1人当たり最大80万円(40万円×2期)
  • 大企業だと60万円(30万円×2期)

という支給額になっています。

さらに、次のような加算措置もあります。

正社員化コースの加算措置

  • 派遣労働者を正社員にした場合
    1人当たり28万5,000円を加算
  • 労働者が母子家庭の母/父子家庭の父だった場合
    1人当たり有期雇用→正社員で9.5万円/無期雇用→正社員で4.75万円の加算
  • 人材開発支援助成金の訓練修了者だった場合
    有期雇用→正社員で9.5万円~11万円
    無期雇用→正社員で4.75万円~5.5万円を加算
  • 正社員転換制度を新設した場合(1事業所1回のみ)
    20万円(大企業15万円)
  • 多様な正社員制度を新設した場合(1事業所1回のみ)
    40万円(大企業30万円)
    ※「多様な正社員制度」というのは「勤務地限定正社員」「職務限定正社員」「短時間正社員」のいずれかを指します。

僕の友人の会社も、本人の希望に応じてリモートワークや短時間勤務であっても正社員として雇用しているので、ぜひこの加算措置を狙いたいとのことでした。

昔と比べて働き方が多様化している今、「多様な正社員制度を導入する」という取り組みは非常に相性がいいと感じます。

障害者正社員化コースの条件や支給額

次に「障害者正社員化コース」。このコースは、障害を持った方を正社員に転換(または派遣労働者から直接雇用)するケースを対象としています。

具体的には「障害のある有期雇用労働者を正規雇用労働者等に転換したとき」「障害のある無期雇用労働者を正規雇用労働者等に転換したとき」が助成対象になります。

支給額としては、基本的には「正社員化コース」と同じ仕組みで、もう少し上乗せの金額や支給要件が詳細に定められています。障害者雇用を推進している企業の場合、こちらのコースも合わせて検討してみるとよいでしょう。

ちなみに、障害者正社員化コースも転換前後6ヶ月間の賃金を比較して3%以上上げる必要があるなど、基本的な要件は共通です。

賃金規定等改定コースの条件や支給額

賃金規定等改定コース

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

「賃金規定等改定コース」は、正社員化ではなく「非正規でもいいから、賃金ベースをもっと上げてあげたい」というケースに適しています。

「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の賃金規定を3%以上増額改定し、その規定を6ヶ月以上適用した場合に支給される助成金です。

3%以上5%未満だと、中小企業なら1人当たり5万円、大企業なら3.3万円が支給され、5%以上なら中小企業6.5万円、大企業4.3万円という支給額になります。

さらに「職務評価」をしっかり行ったうえで改定した場合、加算として中小企業なら1事業所20万円(大企業の場合は15万円)がプラスされるなど、処遇改善の質を上げるためのインセンティブも用意されています。

そもそも非正規であっても給与水準がある程度高ければ、働く人にとってもやりがいは大きいですし、企業側にも離職率の低下といったメリットがあると思います。

賃金規定等共通化コースの条件や支給額

賃金規定等共通化コース

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

「賃金規定等共通化コース」は、有期雇用労働者等に対して、正社員と同じ賃金規定を適用した場合に支給される助成金です。

「正社員と同等の賃金規定を新しく作り、それを適用しましたよ」というとき、中小企業なら1事業所あたり60万円(大企業45万円)が支給されます。

なお、こちらは賃金規定等改定コースと異なり「共通の賃金規定を導入」する点が特徴です。要は、正社員と全く同じ基準で給与を決められるようにするのです。

僕が見たある企業では、正社員・契約社員・パートそれぞれ賃金規定がバラバラになっていたところを、このコースを使って「社員とパートで“職務等級表”を共通化」した、という事例がありました。

驚いたのは、実はこの仕組みにしてから、パートさんたちがすごくやる気を出してくれるようになり、業務効率がぐっと上がったらしいんです。公平な評価・昇給の仕組みってやはり大切だなと思いますね。

賞与・退職金制度導入コースの条件や支給額

賞与・退職金制度導入コース

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

非正規雇用労働者にも賞与や退職金制度をきちんと整備してあげたい、というケースには「賞与・退職金制度導入コース」が適合します。

コース名のとおり、有期契約社員やパートにも賞与・退職金制度を新たに用意し、実際に支給(積み立て)まで行う中小企業なら1事業所あたり40万円(大企業なら30万円)が支給されます。

もし賞与と退職金の両方を同時導入した場合はさらに加算があり、中小企業で56万8,000円、大企業で42万6,000円になるなど、制度整備にはかなり大きな後押しを受けられます。

実際、僕も「契約社員さんにも賞与あげたいなあ」と思っていた時期があったのですが、一気に導入すると人件費がふくらむのが怖かったので、こうした助成は非常に助けになります。

社会保険適用時処遇改善コースの条件や支給額(令和8年3月31日まで)

社会保険適用時処遇改善コース

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

最後に「社会保険適用時処遇改善コース」。こちらは令和8年3月31日までの暫定措置です。

ざっくりいうと「非正規のパートさん等を社会保険に入れる際、手当などで実質給与をアップしてあげると助成金が出る」というものです。

具体的には、週所定労働時間を4時間以上延ばして社会保険の被保険者要件を満たした場合や、労働者負担分を上回る手当を支給した場合などに、1人当たり40万円や30万円といった助成金が支給されます。

今後、短時間労働者への社会保険適用拡大がどんどん進んでいく流れの中で、「短時間パートさんを新たに社保加入させるとき、その手取りが減らないように工夫する」という企業も多いでしょう。

このコースを上手に活用すれば、負担がかなり軽減され、従業員も手取りが下がらずに済みます。企業側と労働者側の双方にメリットのある制度だと思います。

キャリアアップ助成金の正社員コースの手続きの流れ

キャリアアップ助成金の正社員コースの手続きの流れ

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

さて、ここからはキャリアアップ助成金の中でも最も需要が高い「正社員コース」の手続きについて、流れを見ていきましょう。

先ほど書いたように、このコースは「非正規を正規にする」ための助成金です。また、最近の拡充によりさらに活用しやすくなっています。

大まかな流れはこんなイメージです。

正社員コースの手続きの流れ
  1. キャリアアップ計画書を作成して労働局へ提出
  2. 就業規則等の改定(正社員への転換規定がない場合)
  3. 就業規則等に基づいて正社員化を実施
  4. 正社員化後6ヶ月分の賃金を支払い(その後1期目申請)
    ※賃金の3%以上増額が必須
  5. 支給申請(取組後6ヶ月の賃金を支払った日の翌日から起算して2ヶ月以内)
  6. 審査・支給決定
  7. さらに6ヶ月継続雇用で2期目申請が可能

よくある質問として「キャリアアップ計画書の提出っていつまでにすればいいの?」がありますが、これは「転換や規定改定などの取り組みを行う日の前日まで」

ちょっとややこしいですが、「転換する直前に慌てて計画書を作成したら間に合わない」なんてことがないよう、少なくとも1ヶ月くらい余裕をもって準備しておくと安心ですね。

ちなみに僕が最初にチャレンジしたときも、計画書の提出期限をうっかり先延ばしにしていて、結局申請手続きのスケジュールがギリギリになってしまったんです。

「もう少し落ち着いて取り組めば、書類作成も楽だったろうに……」と後悔したことを思い出します。

キャリアアップ計画書を作成して労働局へ提出

キャリアアップ助成金の正社員コースで最初にやるべき手続きは、キャリアアップ計画書を作成して労働局へ提出することです。

具体的には、様式第1号の「キャリアアップ計画書」をダウンロードし(厚生労働省サイトなどから入手可)、事業所情報、管理者情報、そして「正社員コースを利用しますよ」という計画内容を記載します。
このとき、従業員代表(非正規も含む全労働者の代表)の意見を聴くことが必須になっています。形だけの意見聴取で終わらないよう、しっかりと労働者の声を拾うことが大切です。

提出するときは、管轄のハローワークあるいは労働局に持参または郵送、あるいは電子申請(令和5年度から)で行います。

就業規則等の改定(正社員への転換規定がない場合)

続いて行うべき手続きは、「就業規則等の改定(正社員への転換規定がない場合)」です。

キャリアアップ計画で「正社員に転換します」と宣言しても、そもそも社内に「正社員転換制度」が存在しなかったら、国としては「本当にやる気あるの?」って思いますよね。

なので、もしまだ正社員登用のルールが就業規則に書かれていないなら、新たに規定を追加しておく必要があるわけです。

たとえば「正社員化コース」の要件にあるように、「6ヶ月以上働いた有期雇用労働者で勤怠良好な者は、面接試験と評価を経て正社員に転換できる」とか、具体的に書かないといけません。

改定した就業規則を労働基準監督署に届出して、効力を生じさせます。

就業規則等に基づき正社員化

転換制度を整えたら、実際に有期スタッフさんらに声をかけ、「希望する人は正社員に移行する」という流れを組み立てます。

手続きとしては、試験や面談を行うことが多いでしょうが、要件に沿った形でやらないと後から「それは助成金対象外です」と言われかねないので、計画書どおりに実施してください。

転換日の翌日から6ヶ月経過するまで、しっかりと賃金アップした状態で雇用します。ここで大事なのは「転換後6ヶ月の賃金が転換前6ヶ月より3%以上上がっていること」です。

そして「転換後12ヶ月で2期目支給」という仕組みがありますので、12ヶ月間、きちんと賃金上昇を維持しながら継続雇用する必要があります。

正社員化後6ヶ月分の賃金を支払い

正社員に転換してから6ヶ月間賃金を払ってようやく、1期目の支給申請が行えます。これが終わってさらに6ヶ月(計12ヶ月)継続すると2期目の申請権利が得られるわけですね。

給与計算の実務担当者は、ここで「ちゃんと以前と比べて3%以上賃金が増えているか」を確認しておきましょう。固定残業代を減らして基本給を上げた結果、実質は上がってないというケースもアウトです。

僕の知人も、「固定残業代部分を減らして基本給をちょっと上乗せする形にしたら、わずかに3%を下回ってしまい、不支給になりそうになった」という悲しいエピソードを聞いたことがあります。

支給申請(取組後6ヶ月の賃金を支払った日の翌日から起算して2ヶ月以内)

キャリアアップ助成金は「ここまでやったら即支給」ではなく、あくまで「事後に申請→審査」という流れになります。

僕も最初は「え、もっと早くお金もらえないの?」と思ったのですが、国としても転換が本当に定着しているかチェックしたいのでしょう。

また、「支給申請期限は、賃金支払日(転換後6ヶ月目の給与払いの日)の翌日から2ヶ月以内」という点に注意してください。

期限を過ぎてしまうと原則として申請不可になってしまうので、社内でカレンダー管理を徹底することが必須です。

審査・支給決定

書類に不備があったり、実態が書類と異なっていたりすると「不支給」になってしまいます。しっかり自社の就業実態や給与台帳を揃えておきましょう。

無事に審査を通過すれば、1回目の支給決定通知が届き、ほどなく助成金が振り込まれます。2期目はさらに6ヶ月後になるので、そちらもきちんと忘れず申請してくださいね。

僕自身も支給決定が下りるまではけっこうヒヤヒヤしていました。「もし書類不備で突き返されたらどうしよう……」とか。

でも実際は、労働局の担当者の方が丁寧にチェックしてくれて、補足資料を出すとすぐに納得してくれました。ちゃんと真面目にやっていれば大丈夫なのだな、と安心した記憶があります。

正社員コースの申請に必要なキャリアアップ計画書の作成ポイント

キャリアアップ計画書

引用:キャリアアップ助成金|厚生労働省

キャリアアップ助成金の正社員コースへ申請するためには、まず「キャリアアップ計画書」をきちんと作成するところがスタートです。ここで、特に気をつけてほしいポイントをいくつか挙げていきます。

「有期契約労働者などのキャリアアップに関するガイドライン」に沿って計画する

国は企業が非正規雇用労働者の処遇改善を進めるにあたり、「有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」を示しています。

賃金アップや研修制度、正社員転換などを具体的にどう考えればいいかまとめられているので、まずはこれを確認してから自社に合った取り組みに落とし込むと進めやすいはずです。

僕自身、最初は「正社員にする」ことばかりに目がいっていたのですが、ガイドラインを読むことで賃金や研修の細かいところにも気が回るようになりました。

キャリアアップ計画様式のフォーマットに沿って作成する

キャリアアップ助成金には、厚生労働省が提示している「キャリアアップ計画書」の様式があります。

この書類をダウンロードし、項目を埋めていく形で作成しますが、大切なのは「正社員コースでどんな取組みをいつまでに実施するのか」を具体的に書くことです。

たとえば「○月までに就業規則を改定し、○月から正社員登用制度を施行する」など、計画期間を明確にするのがポイントですね。

僕は最初に作るとき、ざっくり書いてしまいがちでしたが、あとで「内容があやふやだと審査で指摘されるかも」というアドバイスをもらい、きちんと修正しました。

チェックリストを活用しながら作成する

厚生労働省のサイトで、キャリアアップ計画書の作成に役立つ「キャリアアップ助成金(キャリアアップ計画書)チェックリスト」が公開されています。

僕はこのチェックリストを印刷して、計画書に一つひとつ盛り込んだかどうか確認していきました。

とくに「就業規則に正社員転換制度をきちんと明文化しているか」「賃金アップの根拠を具体的に示しているか」など、申請で見落とされがちな点を一緒にチェックできるのでおすすめです。

せっかく時間をかけて計画書を作っても、肝心の要件が漏れていると不支給になってしまうので、念入りに確認しておきましょう。

対象となる労働者の明確化

キャリアアップ計画書を作る上で大切なことは、「誰を正社員化したいのか?」を明確にすることです。あいまいに「なんとなく正社員にしたいかも」程度だと、後から混乱してしまいます。

キャリアアップ計画書には「どの部署の契約社員を何名くらい登用したいか」「何ヶ月以上勤務している人を対象とするか」など、一定の客観的基準をしっかり書くとスムーズです。

計画期間は3年以上5年以内

キャリアアップ計画書の計画期間は、3年以上5年以内で設定する必要があります。僕は最初3年で計画期間を設定しましたが、「うちは5年でゆっくりやる」という会社もあります。

とはいえ、計画期間内に取り組みが終わらなくなった場合は変更届を出さないといけないので、なるべく現実的なスケジュールを考えましょう。

労働者の意見聴取をきちんと行う

キャリアアップ計画書を提出した際に、「労働組合等の労働者代表者の意見を聴取しましたか?」と聞かれます。ここで労働者代表者の意見を無視して単に書類だけ記載してしまうのはリスキーです。

正社員化の対象者本人から「こういう条件なら正社員化を検討したい」「勤務地限定制度があればありがたい」などリアルなニーズを聞き、それを計画に落とし込みましょう。

賃金アップの具体策を想定しておく

正社員化コースで必要な「転換後6ヶ月の賃金は転換前比3%以上アップ」という条件を満たすために、どの項目で賃金を上げるのかを、具体的に考えておきましょう。

基本給か、業務手当か? 固定残業代をどう扱うのか? など、あらかじめ想定しておく必要があります。「実際には賃金が3%上がってなかった……」なんてことになると、不支給になりかねません。

キャリアアップ助成金の正社員コース申請時の注意点

キャリアアップ助成金の正社員化コースは確かに魅力的ですが、以下のような落とし穴もあるので注意してください。

申請内容に虚偽があると不正受給としてペナルティが発生

助成金はあくまで国が公的に支援してくれる制度なので、申請内容に虚偽があった場合は厳しいペナルティの対象になります。

過去には「書類だけで正社員転換したことにして、実際は有期雇用のままだった」なんて不正が報じられることもありました。

発覚したら全額返還はもちろん、企業としての信用にも大きく傷がつくので絶対に避けましょう。

助成金に関わる書類は5年間の保存義務がある

キャリアアップ助成金に限らず、雇用関係の助成金では「後日、確認のために書類提出を求められる場合がある」と思っておいたほうが無難です。

労働条件通知書や給与明細、雇用契約書、就業規則など、助成金に関連する書類は最低5年間は保存しておかないといけないルールになっています。

僕は専門のファイルを作って管理し、必要があればすぐに取り出せるようにしてあります。

対象者が事業主の3親等以内の親族だと助成対象外

これは意外と知らない方がいるのですが、「社長の家族を正社員化して助成金をもらう」というのは不可。3親等以内の血族・姻族が対象外となるので、家族経営の企業は特に注意してください。

また、元取締役だった方が退任して有期雇用労働者として在籍している場合なども該当するケースがあります。事前にしっかり確認しておきましょう。

対象者に年齢制限を設けていると支給対象にならない

「35歳未満しか正社員登用しません」といった年齢制限を設けている場合、キャリアアップ助成金の支給対象外になります。

加えて、正社員に転換しようとしている方が定年を超えている、あるいは定年まで1年をきっているケースも同様なので注意しましょう。

申請期限を過ぎると無効になる

転換後6ヶ月の賃金支払いが終わってから2ヶ月以内に必ず申請しないといけません。「忙しくて後回しにしていたら期限を過ぎた」というのは非常にもったいないので気をつけましょう。

3%アップの計算に含められない手当がある

正社員化コースで必要な「転換後6ヶ月の賃金は転換前比3%以上アップ」という条件ですが、実は3%アップの計算に含められない手当が存在します。

賃金比較(3%以上増額)の際に含めることのできない手当

①実費補填であるもの

  • 就業場所までの交通費を補填する目的の「通勤手当」
  • 家賃等を補填する目的の「住宅手当」
  • 寒冷地で暖房費を補填する目的の「燃料手当」
  • 業務に必要な工具等を購入する目的の「工具手当」
  • 食費を補填する目的の「食事手当」

②毎月の状況により変動することが見込まれる等、実態として労働者の処遇が改善しているか判断できないもの

  • 本人の営業成績等に応じて支払われる「歩合給」
  • 本人の勤務状況等に応じて支払われる「精皆勤手当」
  • 所定外労働時間に応じて支払われる「休日手当」
    および「時間外労働手当(固定残業代※を含む。 )」
  • 一定期間のみ適用され将来に減額が見込まれる「調整手当」

③賞与

  • 一般的に労働者の勤務成績に応じて定期または臨時に支給される手当
    (いわゆるボーナス)

引用:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)(PDF)

上記のように、実費弁償的な通勤手当や住宅手当、残業代(時間外手当)などは、賃金の増額計算には含められません。

また、固定残業代の時間相当数を下げると実質的に賃金が上がっていないと見なされるケースもあります。賃金3%アップの計算をする際は、賃金計算ツールなどを使ってミスが起きないようにしましょう。

就業規則を周知する必要がある

キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、改定した就業規則が労働者に周知されていないとみなされると不備と扱われることがあります。

改定した就業規則は、職場の見やすいところに紙を掲示したり、社員にメールで通知したりするなどして、確実に周知しましょう。

財務支援に強いTaigen

補助金申請から資金調達まで、Taigenが貴社の財務強化を支援します。

補助金のプロが、貴社の成長に必要な資金をしっかりサポート。

補助金の活用で一歩先へ、今すぐTaigenにご相談を!

財務支援に強いTaigen