
コラム
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出典:事業承継・引継ぎ補助金
「事業承継・引継ぎ補助金」とは、以下の中小企業等を支援する補助金制度のことを指します。
企業の経営権や事業を現在の経営者から後継者へ引き継ぐことを指します。
「事業承継・引継ぎ補助金」が設立された背景として、日本の中小企業が抱えている後継者不足や、経営資源が消失しまうといった問題があります。
特に、経営者の高齢化が進む中、後継者がいない中小企業が増加しており、黒字経営であっても廃業を余儀なくされるケースが多い現状があります。2020年には廃業件数が過去最多の約5万件に達し、そのうち6割以上が黒字廃業という深刻な状況でした。
こうした後継者不在による廃業問題により、中小企業がこれまで蓄積してきた貴重な経営資源が失われるリスクが高まっています。廃業による経営資源の消失を防ぐための手段の一つとして、事業承継やM&A(企業の合併・買収)の重要性が認識されるようになりました。
M&Aは、経営資源を引き継ぐだけでなく、企業の生産性向上や業績改善にも良い影響があると言われています。しかし、潜在的にM&Aを必要とする企業は約60万社なのに対し、現在M&Aを実施できている中小企業は年間3~4千件程度に留まっているという試算データもあります。
「事業承継・引継ぎ補助金」は、中小企業が円滑にM&Aを行える環境整備を早急に行い、M&Aを必要とする企業と実施する企業のギャップを埋めることで経営資産の次世代への継承を後押しし、最終的に日本の経済の活性化を図ることを目的とした補助金制度です。
出典:中小企業庁:2024年版「小規模企業白書」 第5節 企業の規模間移動と開廃業
「事業承継・引継ぎ補助金」では、補助の対象が「経営革新枠」、「専門家活用枠」、「廃業・再チャレンジ枠」の3つの枠組みに分かれています。
ここからは、「事業承継・引継ぎ補助金」の補助対象となる3つの取組内容の概要について解説します。なお、ここで解説する「事業承継・引継ぎ補助金」の内容は、公募要領(9次公募・10次公募)の内容に則っています。
経営革新枠は、事業承継やM&Aを契機として中小企業が新たな取り組みを実施する際に必要な経費を補助する枠組みです。
経営革新枠のなかには、事業承継の形態に応じて、補助金の申請類型が以下3つに分かれています。
創業支援類型(Ⅰ型)は、事業承継をきっかけに創業(開業や法人設立)をして、新規設備の導入や新たな販路開拓など、新たな経営改革に取り組む場合に適用されます。
経営者交代類型(Ⅱ型)は、親族内承継や従業員承継によって経営者が交代した際、新規設備の導入や新たな販路開拓など、新たな経営改革に取り組む場合に適用されます。
M&A類型(Ⅲ型)は、事業再編・事業統合等のM&Aをきっかけに、新規設備の導入や新たな販路開拓など、新たな経営改革に取り組む場合に適用されます。
専門家活用枠は、M&Aや事業承継を支援する専門家を活用して、事業再編や統合をスムーズに進めるための費用を補助する枠組みです。
専門家活用枠は、補助金の申請類型が以下の「買い手支援類型」と「売り手支援類型」に分かれています。
M&A(事業再編・事業統合)にともなって経営資源を譲り受ける企業が、専門家の支援を受けながら事業承継や統合を実施する場合に適用されます。
M&A(事業再編・事業統合)にともなって経営資源を譲り渡す企業が、専門家の支援を受けながら事業譲渡を実施する場合に適用されます。
廃業・再チャレンジ枠は、M&Aが成立せず、既存事業を廃業した上で新たな事業に挑戦する中小企業や個人事業主に対し、廃業に伴う経費や再挑戦に必要な経費を補助する枠組みです。
「事業承継・引継ぎ補助金」は上記3つの枠組みで成り立っている補助金ですので、ご自身の企業・組織がどういった状況なのかによって、申請する補助金の枠組みが変わってきます。
ここからは、「経営革新枠」、「専門家活用枠」、「廃業・再チャレンジ枠」それぞれの、補助額や補助対象事業、申請方法・公募スケジュールなどについて解説していきます。
はじめに、事業承継・引継ぎ補助金『経営革新枠』の補助事業計画の条件や補助対象経費、補助率・補助上限額、公募スケジュールと申請方法、成功事例についてご紹介していきます。
『経営革新枠』は、中小企業者や個人事業主が、事業承継やM&Aを契機として新たな取り組み(経営革新等)を行う際に、その経費の一部を補助する制度です。
具体的には、類型ごとに以下の条件を満たす必要があります。
高齢化により廃業予定だった地域の製造業者から設備と従業員を引き継ぎ、新たな商品ラインを開発するといったケース。
親族内承継、従業員承継、または経営再生を伴う事業承継を行う者。
従業員がオーナーとなり、ITツールの導入や販路拡大による業務効率化を実現するといったケース。
事業再編・事業統合を通じて事業を引き継ぐ者。
地域で唯一の特産品販売事業を買収し、新規販路を開拓。
『経営革新枠』の補助対象経費は、補助事業期間内に契約・発注・納品・検収・支払いが完了した経費のことを指します。具体的な例としては、以下のものが含まれます。
補助対象経費の 2/3以内 または 1/2以内
補助率が2/3以内になるには、以下いずれかに該当する必要があります。
『経営革新枠』の公募スケジュールと申請方法は以下のとおりです。
事業承継・引継ぎ補助金『経営革新枠』の9次公募はすでに終了しています。ただし、2025年以降も補助金の10次公募や11次公募などが順次開始される可能性があるので、引き続き注視が必要です。
申請手順は以下のとおりです。
最後に、事業承継・引継ぎ補助金『経営革新枠』の補助金活用・成功事例についてご紹介していきます。
合同会社福田商会(愛知県、自動車小売業、従業員5名)は、2021年に父から事業を承継。
事業承継・引継ぎ補助金『経営革新枠』を活用して大型フォークリフトを導入し、トラックのボディ載せ替えサービスを開始。
これにより顧客の多様なニーズに対応し、付加価値向上と在庫管理の効率化を実現。今後は新規取引先の開拓を進め、さらなる販路拡大を目指す。
有限会社MARUTA(宮城県、食料品製造業、従業員18名)は、2023年に震災後の事業再建を経て長男が事業を承継。
事業承継・引継ぎ補助金『経営革新枠』を活用し、冷凍庫や自動梱包機器、直売所用ショーケースを導入して生産性向上と品質保持を実現。
また、ジェラート製品の開発に取り組み、今後は生産工程の自動化やトレーサビリティ強化を進め、地域特産品「北限のしらす」の認知拡大と地元水産業の発展に貢献することを目指している。
株式会社I.Pクラフト(三重県、建築内装および設備工事業、従業員5名)は、28年来の取引先で後継者不足により廃業予定だった建築金物販売施工会社を事業承継。
事業承継・引継ぎ補助金『経営革新枠』を活用し、レーザー加工機を導入して木製製品の加工サービスを開始し、顧客のニーズに応じた付加価値の高い商品を提供。
今後は加工商品の多様化とデジタルツールを活用した認知度向上、建築会社や設計事務所へのPRで新規顧客の獲得を目指している。
続いて、事業承継・引継ぎ補助金『専門家活用枠』の補助事業計画の条件や補助対象事業、補助対象経費、補助率・補助上限額、公募スケジュールと申請方法、成功事例についてご紹介していきます。
『専門家活用枠』は、事業再編・事業統合を伴う中小企業者や個人事業主が、専門家の支援を受けながら経営資源の引継ぎを行うことを目的としています。
具体的には、類型ごとに以下の条件を満たす必要があります。
株式や経営資源を譲り受ける予定の中小企業者または個人事業主。
株式や経営資源を譲り渡す予定の中小企業者または個人事業主。
すべての類型で、以下の条件を満たす必要があります。
『専門家活用枠』では、事業再編・事業統合(M&Aなど)に必要な専門家への支払いが補助対象となります。具体的な補助対象経費は以下のとおりです。
M&A支援機関登録制度に登録された専門家(例:フィナンシャルアドバイザー、仲介業者)
補助対象経費の2/3以内または1/2以内が補助されます。
上記の条件に該当しない場合(中小企業全般が対象)。
『専門家活用枠』の公募スケジュールと申請方法は以下のとおりです。
事業承継・引継ぎ補助金『専門家活用枠』の10次公募はすでに終了しています。ただし、2025年以降も補助金の11次公募や12次公募などが順次開始される可能性があるので、引き続き注視が必要です。
建物サービス業A社(愛知県、従業員7名、売上高1億円~3億円)は、排水管洗浄技術を活かし、従業員の雇用継続と取引先関係の維持を目的に事業承継を実施。
アドバイザリー契約を活用し、複数の候補企業との面談を経て、技術を最大限に活用できる相手に株式譲渡を決定。
事業承継・引継ぎ補助金『専門家活用枠』を委託費として活用し、現在は業務詳細の引継ぎを進めている。
運送業C社(静岡県、従業員13名、売上高5億円~10億円)は、事業拡大を目的に山梨県の拠点を持つ企業を株式譲渡で引き継ぎ。
静岡―山梨間の物流需要増加を見据え、荷主とのシナジー効果を活かしたサービス向上を目指すとともに、従業員の雇用継続と取引先との関係維持も達成。
事業承継・引継ぎ補助金『専門家活用枠』は委託費として活用し、円滑な経営資源引継ぎを実現した。
続いて、事業承継・引継ぎ補助金『廃業・再チャレンジ枠』の補助事業計画の条件や補助対象事業、補助対象経費、補助率・補助上限額、公募スケジュールと申請方法、成功事例についてご紹介していきます。
廃業・再チャレンジ枠は、M&Aが成立せず、既存事業を廃業した上で新たな事業に挑戦する中小企業や個人事業主に対し、廃業に伴う経費や再挑戦に必要な経費を補助する枠組みです。
『廃業・再チャレンジ枠』の補助適用条件は以下のとおりです。
中小企業者または個人事業主で、以下のいずれかを満たす場合。
『廃業・再チャレンジ枠』の補助対象となる事業(廃業・再チャレンジ)は以下のとおりです。
事業承継(事業再生を含む)で事業を引き継いだ中小企業者等が、新しい取り組みを実施するために、既存の事業または譲り受けた事業の一部を廃業する場合。
※「経営革新枠」との併用が可能です。
M&Aによって事業を引き継いだ中小企業者等(他社の経営資源を活用して創業した者も含む)が、新しい事業展開を進めるために、既存の事業または譲り受けた事業の一部を廃業する場合。
※「専門家活用枠」との併用が可能です。
M&Aにより事業を譲渡した中小企業者等が、M&A後に残った事業を廃業する場合。
※「専門家活用枠」との併用が可能です。
M&Aが成立せず事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主や個人事業主が、地域で新たな需要を生み出し、雇用の創出を目指す新たな挑戦を行うために既存事業を廃業する場合。
『廃業・再チャレンジ枠』の補助対象経費は、廃業を実施するために必要な以下の費用が該当します。
商品在庫等を専門業者に依頼して処分した際の費用。
事業廃止に伴う建物や設備の解体費。
借用物件返却時に義務となる原状回復費。
リース契約の解約金や違約金。
効率化を目的とした設備等の移転費。
※併用申請の場合、補助率は他の申請枠(経営革新枠、専門家活用枠)に準じます。
『廃業・再チャレンジ枠』の公募スケジュールと申請方法は以下のとおりです。
事業承継・引継ぎ補助金『廃業・再チャレンジ枠』の9次公募はすでに終了しています。ただし、2025年以降も補助金の10次公募や11次公募などが順次開始される可能性があるので、引き続き注視が必要です。
交付申請書類一式、契約書、領収書、廃業計画書など。
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1997年生まれ、群馬県出身。新卒で不動産系設備会社に入社し、営業職として従事。新人賞を獲得。その後、株式会社グロースマネジメントコンサルティングに参画。現在では、事業再構築補助金/ものづくり補助金の申請支援サービスにおける申請者への新規営業・マーケティングをメインに行う。見た目通り、温和な性格で話しやすい雰囲気作りを心がけている。趣味は、ゴルフ(スコア非公開)とダーツ(Rt.8)。